日本語コラム

未来へのレガシー
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いよいよ7月23日、東京2020オリンピック・パラリンピックが開始されます。新型コロナウイルスの影響で1年の延期となったあと、海外観客の日本への受け入れの断念、緊急事態宣言が発令されている首都圏会場で実施する競技の無観客での開催など、これまでにない逆境の中で行われる世界最大のイベントは、私たちの未来に何を残すでしょうか。

 過去、オリンピックはテクノロジーの実証実験の場としても活用された歴史があります。1964年の東京オリンピックでは衛星生中継で世界各国に開会式の模様が放送されたり、2018年の平昌冬季オリンピックでは開会式に1200機を超えるドローンによる光のショーが話題になりました。今回の東京オリンピック・パラリンピックでは選手村を巡回するバスとしてトヨタの自動運転車「eパレット」を利用することになっています。更に、コロナ禍という制約があるからこそ、誰もが「会場に行けなくても楽しむ方法」を模索し、テクノロジー×スポーツが加速するきっかけの大会になる可能性も秘めていると思います。

今回のオリンピックも賛否両論ありますが、数十年後に振り返ったときには、きっと色々なレガシーを残しているのではないでしょう。もし、大会期間中に選手のコロナ感染を抑えられれば、それもきっと後世に残る偉業になるでしょう。

森林浴
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今コロラドは一年で一番美しい季節を迎えていますね。ほんの少し雪をかぶった山々や若い緑が揺らぐ大地、州花のコロンバインをはじめとする色とりどりのワイルドフラワーがそこかしこに咲いていて、私たちの目を楽しませてくれます。こんな恵まれた環境に暮らす私たちは、その恩恵を求めて、山や森に足を運ぶことも少なくないと思います。

実は、日本語には森林浴(英語ではForest Bathing)という、まさにこの自然の恵みを全身に浴びるといった意味の言葉があります。この言葉は、自然美を見直し、森を造る意欲を高めようとの狙いから、温泉浴・海水浴・日光浴などになぞらえて、日本の林野庁が主導して日本国内で提唱した「森林浴構想」に起源があるそうです。また、森林浴の最適な方法としては、心身にストレスを感じない程度の運動量で、生活圏内や近場にある森林を歩くこととされています。そして最近では、この森林浴の科学的効能が様々な研究によって実証されているようです。例えば、森林から発散されている独特な森のにおい成分フィットチッドや滝などの近くの細か水しぶきに含まれるマイナスイオンを人が吸収すると、精神が落ち着きリラックスしてくるという研究結果が出されています。

電化製品やプラスチックに囲まれ、 排気ガスが飛び交う都心で暮らす私たちには、まさに森林浴は心身ともにリフレッシュさせてくれる森林セラピーといったところでしょうか。四季折々の森の表情を楽しみながら、樹木の香りを思いっ切り吸い込んで、森のパワーを全身で感じてみたいです。

「Japan in the Schools 」プログラム
A hybrid Japan in the Schools class.

A hybrid Japan in the Schools class.

今日は、コロラド日米協会の運営する教育プログラム「Japan in the Schools 」の紹介とその体験記です。Japan in the Schoolsは日本とコロラド州を教育で繋ぐという当協会の使命のひとつを果たすため、メトロ デンバーとボルダーエリアの教育機関に提供されています。2015年までに、このプログラムを通して繋がった学校と生徒の数は110校、6000人以上に上ります。内容は日本の地理、歴史、言語、生徒の日常についてのスライドプレゼンテーションと折り紙や習字などの文化体験の二部構成で、小学生から高校生まで、それぞれの教育目的に合わせてカスタマイズされています。

このプログラムに携わるようになって数年、たくさんの学校を訪れる中、私が気づいたことは、生徒たちは想像以上に日本について知っていて興味をもっていること、そしてそんな彼らの興味を支え、素朴な質問に答えられる機会が必要であるということです。特にプレゼンテーションで大事なのは、質疑応答の時間。生徒たちからは、時に思いもよらない質問が飛んできます。例えば、「日本で行かない方がいいところは?」これには答えに困りましたが、あくまで私の意見として「パチンコ」と答え、その理由を説明しました。他にも「どんなアニメが好き?」「日本とアメリカどっちが良い?」など、個人的な見解を問われることも多く、そんな時は彼らにステレオタイプな知識を教えないように注意しながら(これがかなり難しい)、自分の意見を伝えるようにしています。ネット社会で、知識や情報は簡単に手に入るけれど、一方通行でその正確性も問われる今、直接生徒を目の前に話ができるこのプログラムは、生徒たちと双方のコミュニケーションを通して、より正確な情報と、異文化体験を提供できる絶好の機会だと思います。

パンデミックによって学校訪問が難しくなったここ一年程は、オンライン訪問に移行し、引き続き多くの生徒や先生とリモートラーニングで繋がってきました。今後は、学校訪問とオンライン訪問の両方を可能にし、さらに対象地域を拡大して、より多くの生徒と日本との繋がりを築き、彼らが異文化・多文化に興味を持つきっかけになれればと願っています。